前田恵助が暫定ランキングトップで迎えた最終戦。暫定ランキング2番手のチャランポン・ポラマイには、10ポイント差をつけており、ホームコースでもある鈴鹿で前田は、初優勝に向けて、順調にマシンを仕上げていた。公式予選では、ただ一人2分11秒台に入れポールポジションを獲得。2分11秒920というコースレコードを樹立したことよりも、師匠の大崎誠之氏のタイムを破れたことがうれしいと予選後に語っていた。悲願の初優勝、そしてシリーズチャンピオンに向けて視界は良好だったはずだが…。 レースは波乱の幕開けとなった。ホールショットはチャランポンが奪い、デチャ・クライサー、岩戸亮介、前田と続く。前田は若干出遅れたもののS字コーナーから逆バンクで2番手に浮上し、トップのチャランポンを追うがデグナーカーブ2個目で痛恨の転倒。再スタートするもののマシンのダメージは大きく、そのままピットに戻りリタイアとなってしまう。 オープニングラップは、そのままチャラポンが制し、デチャが続きYamaha Thailand Racing Teamが1-2。タイトルは、俄然チャランポンが有利な状況となっていた。2周目のバックストレートでデチャが前に出て行きレースをリード。チャランポン、岩戸、榎戸育寛、名越哲平、奥野翼と続き、トップグループを形成する。しかし奥野は、ジリジリと遅れると5周目のモーターサイクルシケイン立ち上がりで転倒してしまい戦列を離れてしまう。 トップ争いで動いたのは榎戸と名越だった。ペースの上がらないチャランポンをかわし、7周目には名越が2番手、榎戸が3番手に浮上する。その後、トップ争いは小康状態となり、デチャをトップに名越、榎戸、チャランポン、やや遅れて岩戸の順で11周目に突入する。榎戸はシケインのブレーキングで名越をかわし2番手に浮上し、運命の最終ラップを迎える。デチャの背後に迫った榎戸は、バックストレートでスリップストリームから抜けだし横に並ぶと130Rでトップに浮上。そのままシケインも抑えると、トップでチェッカー! 全日本初優勝を達成すると共に、シリーズチャンピオンも大逆転で獲得する結果となった。2位にデチャ、3位に名越と続き、チャランポンは4位となったため、僅か1ポイント差でランキング2位となった。 最後にトップグループから遅れた岩戸が5位、以下、清末尚樹、伊藤和輝、星野知也、松崎克哉、岡村光矩と続くトップ10となった。
2位/#2 Decha KRAISART(デチャ・クライサー)Yamaha Thailand Racing Team 『まず榎戸選手におめでとうと言いたいです。抜いていった背中を見て、すごく才能のあるライダーだと思いました。今回、チームオーダーはなく、ターゲットにしていたチャランポン選手のタイトル獲得が実現できずに残念な気持ちもあります。レース中に後ろを振り返りチャランポン選手がいなかったので“何でついて来ていないんだ?”と思いましたが、これもレース。毎戦ベストを尽くしてきた結果です』