2024全日本スーパーモト選手権第4戦レポート
2024年7月14日(日)
名阪スポーツランド(奈良県)
天候回復でドライコンディションの熱戦に!
今季の全日本スーパーモト選手権シリーズは、昨年よりも1戦増えて全7戦のスケジュール。千葉県の茂原ツインサーキットで実施された前戦から2週間後となる7月14日(日)には、第4戦が奈良県の名阪スポーツランドで開催された。
複数のオンロードコースに加えて、全日本モトクロス選手権も開催されるモトクロスコースも有する名阪スポーツランド。今大会は、昨年までと同じくミニバイクなどの走行用に設けられたオンロードのABコースと、サンド質を特徴とするモトクロスコースを、舗装された誘導路も使いながらつないだ特設コースで競われた。ただし、レースウィークに降った雨の影響で、例年よりもダートセクションは短め。また、ダートからターマックに戻る地点が変更され、ターマックセクションは昨年までより長くなった。
天候は曇りで、ターマックの路面はドライコンディション。ダートは、大半の区間がサンド質の路面に水が含まれて適度に締まったベストな状態だったが、ターマックに戻る直前の下りはぬかるみ、ここで転倒者が続出した。
安定感のある走りで小原堅斗が今季初の2レース制覇!
全日本最高峰となるS1プロクラスは、参加した11名全員が4スト450ccマシンを駆り、予選は15分間のタイムアタック方式、決勝は10周の2レース制で競われた。トップライダーのひとりである長谷川修大(#4)は、翌週に控えた鈴鹿8時間耐久ロードレースへの影響を考慮して欠場。一方、同じく鈴鹿8耐にも参戦する昨年度王者の日浦大治朗(#1)は、今大会にも出場を果たすと、予選では1分07秒874のトップタイムをマークした。予選2位は、1分08秒270を叩き出したポイントランキング3番手の川島颯太(#3)。さらに、ランキング2番手の小原堅斗(#2)が1分08秒881で予選3位となり、決勝レース1のフロントローに並んだ。また、予選4位にはS1プロクラスルーキーの佐藤瑞城(#20)、同5位にはランキング4番手の金子和之(#5)、同6位には昨年度のS1オープンクラスでランキング2位となった呉本朝也(#17)が入り、決勝レース1のセカンドロースタートとなった。
決勝レース1では、スタート直後の1コーナーで川島が転倒。滑走したマシンが先行していた日浦に突っ込み、日浦も転倒した。これにより、予選5位の金子が先頭に立ち、予選7位の新沼伸介(#10)が2番手、予選3位の小原も1コーナーのアクシデントで出遅れて3番手と、荒れたオープニングとなった。1周目、ダート区間で小原がトップに立ち、金子、新沼、呉本が追撃。川島は10番手、日浦は最後尾の11番手から追い上げを狙った。2周目、トップの小原はリードを約4秒に拡大。翌周、2番手の金子も後続を約4秒離し、呉本と新沼と佐藤が三つ巴の3番手争いを展開した。佐藤から7秒ほど遅れた佐々木啓之(#13)の背後には、日浦と川島。4周目には川島、日浦、佐々木のオーダーとなり、翌周には日浦が川島を抜いた。
6周目、ダートの出口で金子が転倒。ここに呉本が突っ込んでクラッシュし、両者ともに大きく後退した。これにより、前の周までに約6秒のリードを築いていたトップの小原は完全な独走状態に。新沼と日浦と佐藤と川島による接近戦が、2番手争いに昇格した。翌周、日浦は新沼を抜いたが、ダートの出口で転倒。これで2番手争いは佐藤、川島、新沼、日浦の順となったが、翌周には日浦が新沼と川島を抜いて3番手に順位を上げた。しかしラスト2周となった9周目、日浦がまたしても転倒。5番手まで後退した。そしてレースは、小原が独走で勝利。最後は単独走行となった佐藤が2位、数度転倒しながらもタイムロスを最低限に抑えた川島が3位、レース終盤にはシフトペダルを破損してペースが落ちた川島に僅差で迫った呉本が4位となった。日浦は5位、新沼は6位でゴールしている。
決勝レース2は、レース1のゴール順位でスターティンググリッドへ。ポールポジションの小原が順当にホールショットを奪うと、約3秒のリードを築いてオープニングラップをトップでクリアした。佐藤をダートで抜いて川島が2番手。以下に佐藤、呉本、日浦が続いた。2周目、2番手の川島から4秒ほど遅れながら、佐藤と呉本と日浦が僅差の3番手争いを展開。日浦が呉本を抜くと、3周目にはトップの小原から5番手の呉本までが、それぞれ3秒前後の間隔を開けた縦に長い隊列となった。6番手以下はトップ5から遅れ、その先頭を広瀬彰信(#21)が守った。4周目、5番手の呉本が前に離される一方で、川島と佐藤と日浦は接近戦に。5周目には、トップの小原を約4秒差で追い続ける川島から、佐藤が2秒ほど遅れたが、6周目には再び3台が近づいた。
7周目、日浦が佐藤の攻略に成功。勢いを保った日浦は、川島の背後に迫り、ここから川島と日浦の激戦が続いた。そして9周目のターマック区間にあるヘアピンカーブで、やや強引に日浦が川島のインを刺したが、ここで日浦が転倒。接触を受けた川島もやや遅れた。これにより、トップの小原はさらにリードを拡大。レースは10周でチェッカーとなり、小原がレース1に続いて勝利を収めた。川島が2位、転倒から再スタートした日浦が3位。佐藤は8周目以降にペースダウンして単独走行の4位、呉本は序盤からポジションを守って5位、最終ラップに広瀬を抜いた金子が6位となった。
小原堅斗(レース1・優勝/レース2・優勝)
「レース前は、とにかく不安でした。誰に言われたわけでもありませんが、ダートが長めということで得意なコースと思われていることは間違いないし、勝たなければいけないと自分自身にプレッシャーをかけすぎていたのだと思います。しかしレース1に向けて気持ちを切り替え、しっかり周りを見ながら攻めの走りをしようと心がけたところ、アクシデントに巻き込まれながらも、運良く1周目からトップを走ることができました。日浦大治朗選手と川島颯太選手がスタート直後に転倒したことはもちろんわかっていましたが、それでも両者ともにトップまで追い上げてくる実力の持ち主なので、早めに逃げておこうと考え、しっかり勝ち切ることができました。レース2は、川島選手が4秒くらい後方で粘っていることは知っていましたが、自分もいいペースで走れていたので、うまくコントロールできました。今季初、カワサキにスイッチして初の2レース制覇。残りは3戦ですが、ポイントランキングのことは考えず、まずは初開催となる次戦の神戸スポーツサーキットでも日浦選手に勝つことを目標にしていきます」
川島颯太(レース1・3位/レース2・2位)
「前戦からわずか2週間のインターバルでしたが、その間に同じチームで全日本モトクロス選手権の最高峰クラスに参戦している大塚豪太選手とモトクロスを練習する機会を得て、いろいろと収穫がありました。しかしレース1は、スタート直後に転倒。日浦大治朗選手を巻き込み、小原堅斗選手にも影響を与えてしまい、本当に申し訳なく思っています。そして自分自身も、あれで厳しい状態に……。それでも3位になれたので、リザルトとしてはギリギリセーフといった感じです。レース2は、途中から背後に日浦選手がいることに気づいていましたが、とにかく小原選手を追う気持ちを持ち続けました。ところが自分が一度ミスし、日浦選手がさらに接近。その後はとにかくインを締めながら走りました。結果は2位で、昨年なら喜べたのですが……。でも、勝つことばかりに執着しすぎていることが、かえって自分を追い込んでしまっているのかもとも思っています。約2ヵ月間のインターバルがあるので、気持ちを切り替え、第5戦以降は新しいシーズンだと思って戦っていきたいです」
実力派の伊藤諒が今季初参戦で2勝をマーク!
18台がエントリー、16台が出走したS1オープンクラスは、15分間のタイムアタック予選と、8周の決勝2レースで競われた。その予選では、全日本デビューレースとなった今季第2戦で、いきなり予選&決勝2レースの完全制覇を達成した沖勇也(#44)が、1分13秒193のトップタイムをマーク。前戦に続いてS2クラスとのダブルエントリーとなった佐藤祐季(#46)が1分13秒628で予選2位、伊藤諒(#49)が1分13秒802で予選3位となり、決勝レース1のフロントローに並んだ。また、予選4位には唯一の1分14秒台となる田淵智之(#17)、同5位には1分15秒台の菅野景介(#16)が入り、予選6~9位の梅田祥太朗(#6)、水野彰久(#8)、大坪正之(#18)、高部充陽(#7)が1分16秒台となった。
迎えた決勝レース1は、S2クラスのレース1で転倒した佐藤が、負傷の影響を考慮して出走せず、2番グリッドが空いた状態でスタート。伊藤がホールショットを奪い、これを沖が追った。ところが、ターマックの中盤で梅田が転倒。救助のため赤旗が提示され、レースは7周に減算されてやり直しとなった。2度目のスタートでは、再び伊藤がホールショット。これに沖、田淵、菅野が続いた。1周目、伊藤と沖は僅差のトップ争いを展開。3秒ほど遅れて田淵と菅野も接近戦となり、高部と水野と予選10番手だった染谷廣則(#29)による5番手争いは、3番手争いの2台から5秒ほど遅れた。2周目、沖はなおも伊藤を僅差で追っていたが、コース終盤のターマックで転倒。再スタートに時間を要して、上位勢から完全に脱落した。
これにより、トップを守る伊藤のリードは約6秒に。田淵と菅野は、後続を9秒ほど引き離しつつ、なおも接近戦を続けた。また、4番手の高部と5番手の水野は約3秒、水野と6番手の染谷の間隔は約5秒に拡大した。3周目、田淵を抜いて菅野が2番手に浮上。翌周には菅野が約4秒のリードを奪った。レース後半、トップの伊藤と2番手の菅野は、6秒ほどのギャップをほぼ保った状態で周回。そのまま伊藤が逃げ切って勝利を収めた。菅野が2位、最後まで菅野を数秒差で追い続けた田淵が3位。ここから15秒以上遅れた4番手の高部には、レース終盤になって水野が再び迫り、最終ラップの7周目には接近戦となったが、順位は変わらず高部が4位、水野が5位となった。染谷は水野から7秒ほど遅れ、終盤には背後に3台が迫ったが、順位を守って6位でチェッカーを受けた。
決勝レース1のゴール順でグリッドに並んでスタートしたレース2は、伊藤がホールショットを奪い、同じくフロントロースタートの菅野と田淵がこれに続いた。しかし1コーナーでは、5番手スタートの水野が転倒。これに沖も絡み、水野はリタイアとなった。1周目、伊藤と菅野と田淵は、後続を4秒ほど離してトップグループを形成。4番手には勝谷仁(#40)が浮上し、これを高部や染谷や戸田道夫(#47)らが追った。しかし2周目に、染谷は転倒により大きく後退。一方で高部は、勝谷に僅差で迫った。2周目以降、トップグループの3台が、4番手以下とのギャップを周回ごとに拡大。4周目には戸田が4番手に浮上し、これで5番手に後退した勝谷の背後には、高部ら7台が連なった。一方、トップグループの3台は、2周目にそれぞれの間隔が2~3秒差となり、その後は大きく変わらず周回を重ねた。
5周目、5番手争いでは勝谷を抜いて高部が先行。勝谷の背後には、依然として6台が僅差で続いた。6周目、伊藤と菅野と田淵は、それぞれが約4秒差。一方、この3台から完全に遅れた4番手の戸田には、高部が接近した。翌周、ダートセクションで伊藤が周回遅れの処理に手間取り、この間に菅野と田淵が一気に接近した。そして8周目の最終ラップは、伊藤と菅野と田淵がトップ争い、戸田と高部が4番手争いを展開。しかしいずれも順位は変わらず、レースは伊藤が勝利し、菅野が2位、田淵が3位と、レース1と同様のトップ3となった。戸田は4位、高部は5位、最後まで後続を抑えた勝谷が6位でチェッカーを受けた。
ケガからの復帰初戦で鈴木優那が2レース制覇
わずか5台で競われたS2クラスも、予選は15分間のタイムアタック方式で、決勝は8周の2レース制。その予選では、藤田友貴(#6)が1分12秒476のトップタイムをマークした。予選2番手は、膝のケガにより約1年半ぶりの全日本参戦となった女性ライダーの鈴木優那(#26)で、タイムは藤田と0.210秒差の1分12秒686。予選3番手には、1分13秒136でランキングトップの佐藤祐季(#23)が入り、決勝レース1のフロントローに並ぶトップ3が0.660秒差という接戦となった。佐藤省吾(#5)が予選4位、上原耕時(#21)が予選5位で、決勝レース1の2列目スタートとなった。なお、藤田と上原は2スト125cc、他の3名は4スト250ccマシンを駆る。
決勝レース1は、ポールポジションスタートの藤田が順当にホールショット。鈴木を抜いて佐藤祐季が2番手で1コーナーをクリアした。しかし佐藤祐季は、ターマックセクションに切り替わる直前に設けられた下りのダートで転倒。これで藤田がトップ、鈴木が約3秒差の2番手、さらに佐藤省吾が約4秒差の3番手で1周目をクリアすることになった。佐藤祐季は再スタートしたが、トップから完全に遅れた最後尾となった。2周目、2番手の鈴木は佐藤省吾を引き離しながら、トップを走る藤田との距離を約2秒差まで詰め、3周目には藤田と鈴木が接近戦。そして、モトクロス出身の鈴木が得意のダートセクションで先行した。
4周目、トップの座を明け渡した藤田も粘り、鈴木と藤田は約1秒差。3番手の佐藤省吾はこの2台から完全に遅れ、単独走行の3番手となった。レース後半、鈴木は2番手の藤田をじわじわと引き離しながらトップを快走。6周目の段階で、両者のギャップは4秒ほどになった。そして8周目のラストラップまで、築いたリードをキープしながら危なげなくトップを快走した鈴木が優勝。藤田が2位、佐藤省吾が3位でチェッカーを受けた。転倒によるダメージもあり、佐藤祐季はペースが上がらず4位。上原が5位でチェッカーを受けた。
レース1のゴール順でスターティンググリッドに並んだレース2は、3番グリッドから佐藤省吾がホールショット。これに藤田と鈴木が続くと、まずは藤田と鈴木が佐藤省吾をパスした。1周目は藤田がトップで、1秒ほど離れて鈴木と佐藤省吾が2番手争いを繰り広げ、さらに1秒ほど離れて佐藤祐季が4番手。5番手の上原は、早くも遅れはじめた。2周目、ダートで鈴木が藤田を攻略してトップに浮上。抜かれた藤田は僅差で鈴木を追ったが、ターマックで転んで4番手に後退した。さらに翌周、2番手を走行していた佐藤省吾がターマックで転倒。これでトップの鈴木は6~7秒のリードを確保し、佐藤祐季と藤田が僅差の2番手争いを繰り広げ、この2台から4秒ほど遅れて佐藤省吾が4番手となった。
4周目以降、鈴木は5~6秒のアドバンテージをキープしたままトップを快走。一方、佐藤祐季と藤田の2番手争いは、4周目の前半に一度は1秒ほど間隔が開いたが、その後は再び接近戦が続いた。そしてラスト2周となった7周目、ついに藤田が先行。そのまま2秒ほどのリードを奪った。鈴木は、後続とのギャップを確認する余裕の最終ラップ。そのままトップチェッカーを受け、フル参戦した2022年の最終戦以来となる全日本で、2レース制覇を達成した。藤田は2位、佐藤祐季は3位、佐藤省吾は4位、上原は5位。今大会の結果、ポイントランキングでは藤田が佐藤祐季を逆転し、4点リードのトップに返り咲いた。
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