2位小川友幸 チャンピオンを決定した
2015全日本トライアル選手権シリーズ第7戦東北大会 2015年シーズンもいよいよ最終戦。今回は11月の開催となったSUGOスポーツランドでは、山頂に雪をかぶった蔵王をあおぐことができた。やや肌寒いながらも、よく晴れたトライアル日和。セクションは中杉トライアル場に8つ、第1から第5と、第8から第9が設けられた。そして少し離れた林に2つ。この第6と第7は国際B級のみがトライする。多くのファンが追いかけながらセクションをめぐる国際A級スーパークラス(と国際A級)のセクションは中杉トライアル場に集中していて、観戦は非常に容易だった。 国際A級スーパークラス14名、国際A級37名、国際B級64名、併催のオープントロフィークラスが、オーバー50クラス1名、125クラス1名、レディース2名、総勢119名が秋空の下、熱戦を繰り広げた。国際B級とオープントロフィークラスは10セクション2ラップ、国際A級と国際A級スーパークラスは8セクション3ラップ、スーパークラスは加えてSSを2セクション、という試合システムだ。 ■国際A級スーパークラス 世界選手権で負傷して、長い療養生活を送っていた斉藤晶夫(ホンダ)が今回から戦列復帰。エントリーは久しぶりに14名となった。ポイント獲得枠は10名だから、その戦いは厳しい。 第1セクションから第5セクションまではやさしめ、第6セクションから第10セクションまではちょっとむずかしめ、SSのふたつはむずかしめ、という今回のセクション設定。 そしてトップ争いは、非常に厳しいものとなった。最初に足をついたのは、この大会でチャンピオンを決めたい小川友幸(ホンダ)だった。第2セクションで1点。黒山健一(ヤマハ)、野崎史高(ヤマハ)、小川毅士(ベータ)はすべてのセクションをクリーンする勢いでトライを続けている。今回はこれに柴田暁(ホンダ)も小川友幸と同じ減点1で続いている。トップグループはほぼこの5人。小川友幸は3位以上ならチャンピオン決定だが、ここまでの戦況では5位となることもあり得る状況だ。 しかし第9セクションで小川毅士と柴田が3点、柴田は第10セクションでも2点を取って、オールクリーン争いからは一歩後退してしまった。トップは黒山と野崎の二人で減点ゼロ。小川友幸が1点でこれに続いた。 2ラップ目もトップ3人のオールクリーン争いは続いた。しかし今度は、第8セクションで野崎が1点。これでオールクリーンは黒山一人となった。 3ラップ目は黒山だった。黒山は小川友幸が1点をついたのと同じポイントで1点。これでトップの3人がそろって1点の同列でトップに並んだ。こうなると、競技時間が短いライダーのほうが上位となる。黒山はひとり先を急ぎ、真っ先にゴールした。ただしこのあとのSSで勝負がつけば、早くゴールしても意味はないことになる。 SSは、二つとも走破は不可能ではないものの、クリーンはなかなかむずかしい。そんな中、SS第1でまず野崎がクリーン。続いて黒山が同じようにクリーンを狙うが、あと3メートルというところで滑り落ちてしまって5点。小川友幸はクリーンをして、これでトップは小川友幸と野崎が1点、黒山が6点ということになった。 そしていよいよ最終SS。巨大なタイヤがライダーの行く手を阻んでいる。しかし加賀国光(シェルコ)が1点で抜け、可能性は出てきている。 柴田、小川毅士と2点で走破した後、野崎がトライ。野崎は加賀と同じく最小限点の1点でここを通過した。これで野崎は2位以上が確定した。 優勝候補から2位争いとなって、黒山が最後のトライ。しかし黒山は最後のタイヤを上れず5点。これで黒山は3位が確定した。残るは小川友幸のトライだ。 小川は、野崎と同じ1点でここを走り抜ければ、時間差で勝利となる。すでに3位以内は決定しているので、3連覇は決まっている。小川は足をついて勝利を得るより、美しい走りでクリーンをするほうを選んだ。しかしわずかにラインがはずれて5点。今回の勝利は野崎で決まった。 野崎は2005年の最終戦、ここスポーツランドSUGOで勝利している。ちょうど10年ぶりのSUGOでの勝利、そして2ストロークマシンに乗り換えての、初めての勝利だった。 今回で3連覇を決めた小川友幸は、最年長タイトル保持者の記録をさらに更新して、自身5回目の全日本チャンピオンとなった。 【野崎史高のコメント】 「心臓に悪い大会でしたが、勝ててよかったです。第8で1点を取った時には集中力が切れかけましたが、なんとか乗り切れました。SSは自信はなかったのですが、克服できて、その点でもうれしいです。簡単に5点になれる設定だったので、なんとか走りきれてよかったです。終わりよければすべてよしです」 【小川友幸のコメント】 「いきなり第2セクションで1点をついて、ほんとうに今日は終わったと思いました。チャンピオンにも赤信号かと思いました。ただそのあとはオールクリーンで粘ってこれたので、そこはよくできたと思いました。今回は表彰台から落ちる可能性もあったので、勝利は逃しましたが、チャンピオンを獲得できて、ほっとしています」 【黒山健一のコメント】 「今シーズンを象徴するような残念な試合でした。3ラップを1点でまとめられたのは悪くはなかったと思いますが、大誤算は両方ともクリーンできるはずのSSでふたつ5点を取ってしまったことでした。これでシーズンが終わってしまったので、シーズンオフはいろいろ考えて、いろいろ変えて来シーズンに臨みたいと思います」
3勝でランキングトップを走る氏川湧雅と、2勝をあげている大ベテランの岡村将敏によるチャンピオン争い。氏川は4位以上なら岡村の成績とは関係なくタイトルが確定する。 ところが氏川は、1ラップ目からふたつの5点であとがなくなってしまう。1ラップ目、氏川の減点は14点。結果、優勝の減点が10点だから、この時点ですでに勝利はありえないことになっていた。ただし氏川は4位でチャンピオン決定だから、まだ試合は終わっていない。 氏川は、2ラップ目を2点でまとめるも、4位以内というのはライバルが見えないだけにむずかしい。この頃、ライバルの岡村はいつものように淡々とセクションを回っていた。 そして結果は、岡村が2位に7点差で勝利。対して氏川は、3位に2点差の5位で今シーズンを終了した。岡村の、逆転タイトル獲得だった。トライアル歴の長い岡村だが、これまでにタイトルを獲得したことはなく、これが人生初タイトルだという。 【岡村将敏のコメント】 「期待はされてなかったと思うんですけど、優勝でチャンピオンとなれました。減点は最小限に抑えられていたので、まとめていられたかなとは思いましたが、途中の経過についてはあまり考えずに走りました。これで後進の教育のためにも、タイトルを目指して走る点について勉強できたのがよかったです」
優勝の岡村祐希(中央) 2位山崎(左)3位松本(右)
オープントロフィー オーバー50、岩田稔
オープントロフィー125 磯谷郁
オープントロフィーレディース 優勝は小谷芙佐子
すでにタイトルを決定している山崎頌太(ベータ)。全勝優勝をねらって今シーズンを戦い、ここまで6戦5勝。最後の戦いは果たしてどうなるか。そして国際A級に昇格するランキング上位5位までを獲得するのは誰か。最後の戦いの興味は絞られていた。 今回の山崎のライバルは、国際A級で勝利した岡村将敏の息子の岡村祐希だった。岡村はこれまで2位に入ったことがあるが、まだ優勝経験はない。1ラップ目、トップは岡村、1点差で山崎。 2ラップ目、ふたりはともに5点でゴールした。しかし岡村には1点のタイムオーバーがあり、結果は同点。クリーン数も同じだったが、1点の数が岡村のほうが多く、岡村の初優勝が決まった。 岡村はすでにランキング2位が決まっていたが、今回の勝利で国際A級での活躍が楽しみになった。父の岡村将敏は国際A級スーパーの昇格が決まっているので、来シーズンはひとつずつ昇格して、親子での全日本参戦となる。ちなみに岡村家には岡村将敏の父、岡村敏美も全日本選手権に参戦。今シーズンは孫と同じクラスでシーズンを戦い、北海道大会ではともにポイント獲得を果たしている。来シーズンは岡村家3世代が全日本の3クラスでそれぞれ戦うことになる。 【岡村祐希のコメント】 「易しめのセクションだったので、足を出さないようにがんばって、苦しい戦いだったんですが、なんとかがんばれました。優勝については気にしないようにして走ってました。優勝したのは終わってからしばらくして聞きました。でも今日は自分としては不満のある走りだったので、勝てはしましたが、あんまり気持ちは良くないです。来年は、まず1ポイントとりたいです」 ◎オープントロフィー オーバー50・125・レディース IAライセンスを所有していたことがある50歳以上のライダーによるオーバー50、若きNAライダーなどによる125、そして来シーズンはシリーズ化が決定しているレディースクラス。オープンクラスは3クラスが設定された。レディースクラスはセクション内を自由に走り、ほかの2クラスは国際B級クラスと同じセクションを走る。 オーバー50を走った岩田稔(ホンダ)は中部のトライアル委員長。前回中部大会の主催者でもある。今回は乗りに乗れていて、減点17点。国際B級5位相当という好成績を残した。 125の磯谷郁(ベータ)は国際A級の磯谷玲の弟。今シーズンは精力的にこのクラスに参戦する。減点は37点で、国際B級24位相当だった。来シーズンは国際B級に昇格して全日本を走るということなので、こちらも楽しみだ。 レディースは小玉絵里加(ベータ)と小谷美佐子(スコルパ)の二人がエントリー。小谷が、12点差で小玉を下した。来シーズンはシリーズ戦となるレディースクラス。それぞれ、初代チャンピオンを目指してがんばるという。